はじめに
今日は、連続ターンの分解・理解について日本と世界の違いをお話し、ターンの構造について考え直してみましょう。
ターンがどのように成り立っているかを、新しい視点から見てみて、考えを整理することで、あなたが今感じている上達のカベを乗り越えるキッカケを掴んでもらおう!というのがこの記事の狙いです。
こんな方の役に立てるようにこの記事は書いています。
「谷回りが上手く作れなくて…。」
「山回りで失速するんです…。」
「切り換えが上手くいかない!」
「どこで何をしたらいいか、なんだかよくわからない!」
こんな悩みを持つみなさんの上達に役立ちたいなと思っています。
…とは言うものの、それら個別の悩みについての事をすべて網羅して1つの記事を書いてしまいますと、たぶんすんごい文字量になり、みなさんそれぞれが個別に思っている「欲しい情報」に全然たどり着けないものになってしまいますので、今回の記事は、ターン全体の話をします。
ターンの中の具体的でピンポイントな解説(いつ・どこで・何をするか)は、それぞれ個別に記事を書く予定です。ご期待ください!
でも、がっかりしないでください。
よく言われるように、やはりターンというのは、色々な要素が繋がって出来ていますので、全体感をしっかりつかむという事が、個別の悩みにもきっとつながるはずです!
後は、競技でのタイムアップという事だけでしたら、今回の記事を読んで頭を整理していただくだけでも、結構プラスになるんじゃないかと思ってます!
さあ、レッツゴー!!
山回りと谷回りだけじゃない!別の考え方で分けてみよう!
総論(日本と世界の違い)
さて、まずは、ざっと総論から掴んでもらえたらと思います。
冒頭で言ったように、日本と世界では、ターンの分解・理解が異なってます。
近年の日本では、基本的には、山回りと谷回りという2分割で説明されることが多いです。
谷回りと山回り(2分割)のターンの図
おそらく90年代後半からこのような解釈が主流となったのだと思いますが、今日の日本では非常にポピュラーな理解のされ方です。
しかし、残念ながら、これだけだとちょっと大雑把というかスキーのターンを理解するのには不都合です。
私としては、割とクラシックな考えに基づいた解釈の方が、ターンがどうなっているのかを理解するのには都合がいいと思っています。
ターンの構造(1986年版 日本スキー教程)
(4)ターンの構造 Structure of turns Schwungmechanismus
- ターンの構造(舵とりと切り換え)
スキーの連続回転は運動特性の違いから舵とりと切り換えに分けることができる。- 舵とり
スキーのターンの本質部分でスキーが雪面と接触しながら回転運動を持続する時期。回転半径の大きさや、スピードを調整する。- 切り換え
連続するターンの舵とりと舵とりをつなぐ動作を切り換えという。切り換えの前半、内傾している身体をスキーの上にもどしてまえのターンの舵取りを終わらせる時期を準備期といい、準備期に引き続き次のターンの内側へ身体を内傾させて新しいターンの舵とりを始める時期を始動期という。
出典:日本スキー教程(1986年版) p.43 / 財団法人 全日本スキー連盟 著
連続ターンは、大きくは2分割で「切り換え」と「舵取り」に分けられ、その「切り換え」はさらに「準備」と「始動」に分けられます。つまりC字で見た時には3分割の構成となります。
なお、このページでは、「準備」の部分を「仕上げ・準備」と呼ぶようにしています。その方が、実際の運動に近いと考えているからです。
これらを図に表すとこんな感じになります。
3分割のターンの図
さて、この記事の大事なキーワードが出揃いました。
「始動」
「舵取り」
「仕上げ・準備」そして
「仕上げ・準備」+「始動」で「切り換え」。
もしかしたら聞きなれない言葉もあるかもしれませんが、スキーの運動を理解するうえでとても大事な言葉です。
全部聞いた事がないという人には数が多くて酷かもしれませんが、是非これを機会に覚えて頂けると良いと思います!
話を戻しまして、世界ではどうなっているかと言いますと、実は、今日においても、今紹介したようなクラシックな解釈に近い、ターンを3分割として理解する場合が多いのです!
もちろん、技術や運動の説明のために、谷回り(ターン前半)や山回り(ターン後半)という概念を使う事もありますが、ベース、前提では、今紹介したように、昔の日本と同じ方式でターンの構造を説明しています。
例えばアメリカですとこんな感じです。
アメリカ式のターンの構造
出典:Alpine Ski Fundamentals CLUB COACH MANUAL p.31 / USSA Coaches Education Department 著
INITIATION(始動)、TURNING(舵取り)、COMPLETION(仕上げ・準備)の3分割です。
また、COMPLETION(仕上げ・準備)とINITIATION(始動)とを合わせてTRANSITION(切り換え)と呼んでいることも、1986年版の日本スキー教程と非常に似ています。
さて、次はドイツです。
こんな感じになっています。
ドイツ式のターンの構造
出典:OFFIZIELLER DSV-LEHRPLAN SKI ALPIN P.28 / Deutscher Skiband e.v. 著
緑で示されたエリア「Bereich Kurvenwechsel」が「切り換え区間」で、赤で示されたエリア「Bereich kurvensteuerung」が「舵取り区間」です。ドイツの図は、C字で考えると3分割となりますが、S字で説明しており、「切り換え」は「切り換え」として説明しているので実際には2分割となります。
ただ、分け方の差こそあれ、基本的な分け方は、「切り換え」と「舵取り」で、やはり日本の昔のターンの構造の説明と非常に似た形で説明をしています。
どうです?面白いでしょう?
このような事を見ると、世界では、昔からある考え方をしっかりと検証、継承、洗練させて今日のスキーの技術体系を作っている事がお分かりいただけると思います!
さて、いつものように話が長くなって参りました。笑
なるべく早め(?)に、ここいらで一旦、結論を言ってしまいましょう。
なぜ、谷回り山回り式のみの2分割で技術を理解しようとするのがダメなのかと言うと、この解釈は、「その区間でスキーヤーがすべき事」でターンの区間を分けておらず、「加速しやすいエリア」「減速しやすいエリア」という外側の要因を基準にターンを分解しているからです。
そのような分け方ですと、スキーヤーからすると、谷回りでも、山回りでもやる事や意識する事が複数あって、何をしたらいいのか良く分からなくなりやすいのです。
みなさんも実感として、そう思いませんか??私はそうでした。
例えばこんな感じです。
「えーっと、谷回りの中には、ターンの始まり(始動)があって、とにかく早く踏み始めないといけなくて、その後すぐにエッジング(舵取り)があって…。で、フォールラインを越えて山回りに入ってもまだエッジング(舵取り)があるんだけど、でもすぐにターンを終わらせ(準備・仕上げ)る動きをし始めないといけなくて…。その後はえーと、えーと…。」
もう、ややこしいんですよね。笑
カッチリした言い方にすると、いわゆるターンマキシマム付近(ターン弧を時計にたとえると、3時のあたり)の運動の連続性と、切り替え付近(時計で6時・12時のあたり)の運動の連続性が説明・理解しづらいんです。谷回り、山回りだけだと。
上下2分割方式によるターン構造の説明
オレンジのバツの所が難しく感じやすくなります。
そして、考えてる時点で難しい事は、実践的な動きの中でやるのは当然もっと難しくなる訳です。
そういうことを考えると、やっぱりこうが良いと思うんですよ。
3分割方式によるターン構造の説明
スキーヤーの運動をベースにした3分割方式で考えると、時計でいうところの3時の付近の連続性が理解しやすくなりましたね!
しかし、これだけだと、まだ切り換えのつながり、図中の(?)のトコロは、まだわかりづらいままですね…。
そこで、「仕上げ&準備 + 始動=切り換え」という考え方が活きて来るわけですよ!
「仕上げ・準備」+「始動」=「切り換え」
「切り換え」は詳しく見るとこういう運動になります。
切り換えとは、やはり実際には連続した運動であって、「仕上げ・準備」と「始動」がこの様なイメージで結びついて成り立っているのです。
これが、ドイツが2分割方式を採用している理由であり、かつての日本と、今日のアメリカが、「仕上げ・準備」と「始動」をまとめてわざわざ「切り換え」と説明するようにしている理由です。
元々、切り換えという運動自体の難易度が高いのですが、このように説明することで、理解と実践がしやすくなります。
切り換えは、それだけをする区間と理解し、それだけをする。
舵取りは、それだけをする区間と理解し、それだけをする。
明快ですよね。これが世界的な考えのベースです。
実際に、私自身、練習の中で色々試したり、レッスンでお客様にこういう考え方を基にレクチャーをしたりしてきてますが、この方が、私というスキーヤーの感覚としても運動を整理しやすいですし、お客様にお伝えしたときの理解度というか反応というか、感触が良いんですよね。
エリアごとにやるべきことが明確ですし、それぞれのつながりも理解しやすい。
これが、今回の話の総論・結論です。雪の軌跡的におススメなスタイルはやっぱりこの形、3分割方式です。
ざっくり総論のつもりが、かなり本格的な話になってしまいましたが、おかげさまで大体の話は一応これで終わりとなります。
もっと正確な話、オタクっぽい話を知りたい人はこのまま読み進めてください。
次からは、我が国の解釈も含めて世界各国の考え方を、国別にもう少し詳しく見ていきます。
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日本のターン構造の解釈と理解
さて、今まで説明してきたように、スキーヤーのすべき事や感覚からするとちょっと不親切な気がする「山回り・谷回り」という2分割の方式。
実は、日本の現行の教程でも、あまり強調して言われなくなっています。
なので、一応、正確な話をするために、次に、今現在の我が国のターン構造の解釈についても詳しく紹介していましょう。
日本には、スキー技術について統括している団体が大きくは2つあります。
それぞれ、全日本スキー連盟(以下SAJ)と日本職業スキー教師協会(以下SIA)と言います。
この2団体は、団体が違うというだけあって、それぞれ多少異なった体系で技術を解釈していますが、そのいずれにおいても、現行の教程では山回り谷回り一辺倒での解釈をしない傾向が見られます。
そのことだけ見ると、クラシックな理解に回帰し、世界の標準的な技術に近づいているように見ることもできますが、
現状では、残念ながら、どちらの解釈についても、他国のものと比較した時に『優れている』とはあまり言えない状況です。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。
SAJ式
まずは、SAJの提唱するターンの解釈についてです。
SAJ式のターンの軌跡
出典:日本スキー教程(2014年版) p.156 / 公益社団法人全日本スキー連盟 著
ご覧のようにターンの軌跡が図示されています。
ターンを谷回りと山回りに分けない、というのは良い傾向ですが、切り換え部分では完全にラインが分断されています。
これは総論の部分で述べた通りの理由で、あまりよろしくないです。
特に切り換えは「どうやめて、どうはじめるか」がとても重要ですので、線が途切れる一点の場所ではなく、エリア・区間で理解した方が都合が良いのです。分断されたラインのイメージが染みついてしまうと、上手に運動を連続させることが難しくなります。
そして、これに拍車をかけているのが、日本独自の切り替えに対する美意識、『ニュートラル』理論です。
これは、ほとんどいかなる状況においても、ターンとターンの間には必ず板をフラットにした両足荷重の状態を作らなければいけないという考え方ですが、
連続した切り換えの中の一瞬の姿勢を殊更に強調するため、切り換え動作の連続性を理解する事をより難しいものに変えてしまっています。
この両足均等荷重で斜面に垂直に立ったフラットの姿勢は、世界的には(そういう練習は別として)あまり推奨されない技術です。
話がそれてしまうので、ここではこれ以上話題にしませんが、ご興味がある方は、やや長いですがこちらの記事もどうぞ。
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さて、話を戻しまして、先程の分割写真だけだと、ちょっと内容の紹介と説明が不十分でアンフェアかと思いますので、別のページも引用してみます。
SAJ式の舵取りと切り換えの図
出典:日本スキー教程(2014年版) p.212 / 公益社団法人全日本スキー連盟 著
先程とはうって変わり、用語解説の章には、切り換えの局面はエリアで図示されています。これは非常に良いと思います。
また、舵取りという言葉も先ほど総論で示した通り、日本でかなり昔から使われている単語で、これも非常にいい言葉です。スキーの運動、特に、雪面から抵抗をもらって方向を変えていく運動&動作を「一連のつながり」として理解するためにとても役立ちます。
ですが、舵取りの図示の仕方はちょっと良くありません。
分からない人に伝わるように書くのが用語解説のぺージの役割だと思いますが、舵取りがどこを指しているかイマイチ明確ではありません。
このように、非常にいい考え方もあるのに、その重要性があまり認識されておらず、明確に解説されていないのは現行教程の良くないところです。
それにこの図自体は用語解説として巻末にさりげなく書いてあるのですが、そうではなく、本の中の話の展開に合わせてつつなるべく早いうちに挿入した方が技術の理解のために良いように思います。
さて次は谷回りと山回りの説明ですが、これもちょっと残念な感じです。
SAJ式の谷回りと山回りの図
- 【山回り】second half(英)
斜滑降または直滑降から最大傾斜線より離れる方向(山方向)へターンすること
ターンの後半部分- 【谷回り】first half(英)
斜滑降から最大傾斜線に近づく方向(谷方向)へターンすること
ターンの前半部分- 【山回りターン】second half turn, uphill turn(英)
斜滑降または直滑降から山方向へ回るターンのこと- 【谷回りターン】first half turn, downhill turn(英)
斜滑降から最大傾斜線を越えて回るターンのこと(後半は実質的には山回りとなる)出典:日本スキー教程(2014年版) p.212 / 公益社団法人全日本スキー連盟 著
図の内容と、言葉の説明が明らかに矛盾しています。ひどいです。
図を素直に読むと、上に向かうターンが山回り、下に書かれたC字の弧全体の事を谷回り、と言う風に示しているように見えますが、文章での説明は違っています。図の説明は、谷回りについてのみ「谷回りターン」について解説してしまっているようです。
そもそも、山回りターンと谷回りターンというのは日本のスキーでも全く一般的では無い理解不能な謎の用語です。「回り」と「ターン」が被ってますし、谷回りなどはターンが付いただけで言葉の意味がまるっきり変ってしまっています。『後半は実質的に山回りになる』??意味不明です。
また、ご丁寧に英語が傍記されていますが、海外の書籍や動画でほとんど見聞きした事のない言い回しです。どこから持ってきたのでしょう?
と言うように、こんな感じでつぶさに見ていくと色々ツッコミどころ満載な現行のSAJの教程ですが、実際のところ、「過去の教程と比較して」という前置きは必要ですが、私は割と好意的に見ています。
あ、コイツ急に日和ったな、なんて言わないでくださいね。笑
これにはちゃんと理由があります。
理由というのは、この現行のSAJの教程は、劣化コピーの域こそ出ていませんが、明らかに欧米の指導の展開方法を意識して構成されており、日本のスキーで以前まで大勢的だった『プルークボーゲン万能論』とでも言うような、とにかく何でもかんでもプルークボーゲンで説明し練習させるような偏った指導から、まがりなりにも脱却し、他国の標準に近づいていけるような指導を日本に根付かせる兆しを作ってくれたからです。
今後の改訂で、またヘンテコリンな方向へ行かない事を願うばかりです。
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おっと、だいぶ話が脱線してしまいました!
今回は、教程の内容にどうこう言う回ではなく、ターンの構造の話をする回でしたね。
話を戻しましょう。
次はSIA式のターンの解釈についてです。
SIA式
さて、ここからはSIAの提唱するターンについて見ていきましょう。
SIA式はこんな感じです。
SIA式のターンの構造の説明
出典:SIA公式スキー&スノーボードメソッドp.29 / 公益社団法人日本職業スキー教師協会 著
SIAは、世界との交流があるという事で、世界の基準にすこし近い3分割方式でターンの解釈をしています。
用語の解説など巻末の目立たないところではなく、ターンの導入、指導の展開に合わせた自然な流れの中にこの図が掲載されているのも非常に良い構成だと思います。
エリアごとにすべきことが言葉で傍記されているのも、とても好感が持てます。
…と言いたいところですが、こちらにもちょっと残念な所があります。
それは、ターンの区間の説明なのに、従来型、現代的ともに、線しか書かれていない空白地帯があることです。
ターンの流れを想像すれば、「切り換え」というエリアがそこに入り、それについての説明が脇にあってもよさそうなものですが…。
おそらくこれは、従来型が下に寄った構成、現代的が上に寄った構成というのを表現したかったのだと思います。
そういう意味で言えばこの図は成功していると言えますが、ターンの局面構造というタイトルに対して考えると、説明が不十分になってしまっていると言わざるを得ません。
それに伴って、結局、ターンをどうやめるのかについて一切言及されていないので、傍記されている文章も不完全なものになっています。
このSIAの教程で言う所の「終動作」と「準備動作」は、連続した動きの中で行われるのが理想的で、そういう意味では、冒頭で示したように、かつて日本に在った解説や世界の解説のように、ターンの全区域をシームレスに説明してある事が望ましいはずです。
加えて言えば、従来型という言葉の従来がいつ頃のことを指しているのかはわかりませんが、それが、ターンの後半ばかりのターン、というのは、過去の技術をちょっとナメすぎ、というか、ないがしろにし過ぎているように感じます。
総論で示したように、すでに30年以上前に、日本においても、ターンの前半からのエッジング(舵取り)を始める技術は紹介されています。
30年以上前からある早期の舵取り
出典:日本スキー教程(1986年版) p.43 / 財団法人 全日本スキー連盟 著
ストレートなスキー板でも、しっかりターンの前半部分から「舵取り」に入れています。
このことからも、日本のスキーが全体として(SAJ、SIAともに)、過去の技術をきちんと検証、踏襲できていないことが良く分かります。
ちなみに、そういう話で言うと、現在のフランスのスキー教程に、デラパージュ(横滑り)を活用した指導法、技術の展開方法が記載されてますが、私の確認した範囲だけでも、このデラパージュにおる指導にはなんと60年近い歴史があります。
このように、道具の進歩に合わせながらも、技術を脈々と洗練・発展させていく事が本当は日本のスキーにも必要なのです。
って、またしてもなんだか説教臭くなってしまいましたね、すみません。話を戻しましょう。
次の図は、谷回りと山回りの図です。
SIA式の谷回りと山回りの図
出典:SIA公式スキー&スノーボードメソッドp.23 / 公益社団法人日本職業スキー教師協会 著
スキーの呼び方という説明にはなっていますが、日本で一般的な、谷回り、山回りについて、しっかりと言及されています。
すでに一般的になっている言葉を、そのまま、やはりこれも必要なタイミングで掲載しているのは、非常に良い点です。
それだけに先に説明した、局面構造が切り替え(特にターンを仕上げるという部分)にキチンと言及していなかったのが残念です。
個人的には、ターンの解説は、やはりシームレスに、ギチギチに要素が詰まった状態の図の方が明快だと思うので、今後の改訂に期待したいです。
またしても、かなり言いたい放題言ってしまいましたので、こちらの教程についてもフォローをしておきますと、SIAの良さは、滑りのバリエーションの豊かさ、という所にあると思います。
『ニュートラル』について言及した記事でも述べましたが、えてして『究極的な、唯一の、正しいターン』を追い求めがちな日本のスキー業界の中にありながら、様々な滑りを許容し、紹介しているというのは、かなりユニークです。
内容と質は別として、取り組み自体は世界的な標準に近く、伊達に「世界と交流がある」と言っているのではないな、という感じがします。
例えば、切り替えについては、技術の上達過程に合わせて、立ち上がり、抱え込みはもちろん、日本では否定されがちなジャンプや踏みかえ操作までもが技術として紹介されている上に、検定においては、いまだに踏みかえターンを種目として存続させており、そういう部分はかなり意欲的な取り組みであると思います。
(世界では、ジャンプや踏みかえによる切り替えは、実際のゲレンデでもレースでも現役バリバリの技術です。)
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さて、日本のスキーの技術解釈は、現在このような感じです。
次は、世界の国々のターンの構造の解釈と理解について紹介しましょう。
なお、引用する本のタイトルなどでAlpineやAlpin(アルパイン、アルペン)という言葉が度々登場しますが、これは、競技、レーシングの意味ではなく、ノルディックスタイルやテレマークスタイルと区別するためにそう呼んでいるだけです。日本では、スキーと言ったら硬いブーツを履く「アルペンスタイル」が普通ですので、アルペンといったら普通は競技の事を指します。
世界のターン構造の理解と解釈
ここからは世界の国の、様々なターン構造の解釈について説明していきます。
それぞれの国によって、位置や分け方に差はありますが、基本的には総論で述べた通り3分割が多いです。
正直言うと、私自身が考え、信じているターンのあるべき姿は冒頭で紹介した、アメリカ式とドイツ式を合わせたような3分割方式で、それ以外の解釈を載せると話が複雑になりますし、最悪は話がこじれてしまいそうで本当は嫌なんですが、思い切って共有したいと思います。
世界一を競い合ってる、いわゆるスキーの列強の国ごとでもターンの考え方はそれぞれ微妙に違う。
「色々なターンの考え方が合っていい」という事を肌身で感じて、技術の在り方をみなさんにも考えて欲しいからです。
また、書籍からの抜粋と合わせて、youtubeで見つけてきた各国の滑りも一緒に紹介します。
彼らが何を考えているかを理解した上で動画を見ることで、彼らのスキーがもっと良く理解できるはずです。
※動画によって、音量が大きかったりする場合がありますので注意してください。
アメリカ式
アメリカ式は冒頭に紹介した通りの3分割方式です。
アメリカ式(USSA式)のターンの構造
出典:Alpine Ski Fundamentals CLUB COACH MANUAL p.31 / USSA Coaches Education Department 著
アメリカの文化として、マニュアル化というものがあると思ってますが、スキーについても同じことが言えるようで、いつ、どこで、何をすべきか非常に明確です。
INITIATION(始動)、TURNING(舵取り)、COMPLETION(仕上げ・準備)の3分割でターンの全区間がシームレスに繋がっています。
Compleation(仕上げ・準備)とInitiation(始動)の局面をまとめてTransition(切り換え)と表現してつながりを意識させているのも非常に好感が持てます。我が国にかつて存在したターンの解釈とも非常に近いですしね!
また、今回は引用・紹介しませんが、別のページには、すべてのエリアについて文章での説明がきちんと書かれており、何をすべきかが明確になっています。
ただ、Tuturning(舵取り)の区間は非常に短く説明されているのが個人的にはあまり気に入りません。
舵取りは上達に合わせて、必要に応じて、結果的に短くなっていくべきものだと思ってますので、これをベースとしてしまうのはちょっとなと思います。
アメリカでは競技と基礎は一本化して教えられているという話ですが、引用した本は、競技色が強いUSSA(競技選手を育成し、オリンピックやワールドカップに選手を派遣している団体)の教本ですので、もしかすると、レッスンの現場では、ターンの構造の解説は多少違うかもしれません。
(アメリカのインストラクターの団体であるPSIAの教本を1か月ほど前に注文したんですがまだ届かないんですよね…。送料ケチったのがまずかったかな?ちょっと心配になってきました…。)
ただ、USSAとPSIAはきちんと連携体制を作って、現場から世界トップレベルまで一貫した教育体制を構築できるようにしている様ですので、解釈がそこまで大きく違う事は無いと思っています。
(PSIAの教本が届いて、もし内容が全然違ったらこの辺は書き直します。)
話を戻して、動画で見てみましょう。
アメリカ式のターン(ゲレンデスキー)
[youtube]
[/youtube]
アメリカのインストラクターの協会であるPSIAの偉い人(なんじゃそりゃ)のデモ滑走です。
舵取りは短めに見えます。
アメリカ式のターン(レーサーのフリースキー)
[youtube]
[/youtube]
USSAの強化指定レーサーです。こちらもやはり舵取りが短く見えます。
まぁレーサーっていうか、テッドリゲティですけどね!笑
ドイツ式
次はドイツ式はです。
ドイツも、日本やアメリカと同様に団体が複数あり、DSVとDSLVというのがメジャーな様です。
DSVが日本のSAJやアメリカのUSSAに相当し、DSLVが日本のSIAやアメリカのPSIAに相当します。
冒頭でも紹介した下の図は、DSVの教程から引用しましたが、DSLVの図と構成は全く変わりません。
2分割方式で技術を説明しています。
ドイツ式のターンの構造の図
出典:OFFIZIELLER DSV-LEHRPLAN SKI ALPIN P.28 / Deutscher Skiband e.v. 著
緑のエリアが切り換え区間です。
「エッジの変更」、「荷重の変更」と「ターンの方向の変更」をしましょうと書いてあります。
赤のエリアは舵取り区間です。
「エッジング」、「角付けの調整」、「舵取りの調整と制御」、「身体の向きの制御」をしましょうと書いてあります。
また、ドイツの教程でもアメリカのものと同様に文章での説明が掲載されています(ただ、アメリカよりはざっくりしている印象です)。
2分割ですと、切り換えの動きの連続性を説明するのには都合がよいです。しかし、ひとつの区間に「(ターンを)やめる・はじめる」という二つの要素が入ってしまうので、そこはすこし難しいかなと思います。
舵取りの区間をしっかりと長く図示している所は非常に好きです。
動画でもその意識が見て取れます。
「谷回りだ早く踏め、山回りだ早くやめろ」ではなく、
「舵取りは舵取り、その間はしっかり踏め」これがスキーの本質だと思います。
動画を見てみましょう。
ゲレンデスキーは丁度良いのが無く、ちょっと長いですが、ドイツのメイン団体であるDSVの公式動画です!
ドイツ式のターン(ゲレンデスキー)
[youtube]
[/youtube]
ドイツ式のターン(レーサーのフリースキー)
[youtube]
[/youtube]
板もターン弧も違うので比較するのもちょっとナンセンスな感じがしますが、アメリカよりちょっと舵取りが長い感じがしませんか?
気のせいかな…?笑
まぁレーサーっていうか、フェリックスノイロイターですけどね!笑
フランス式
次はフランスです。
フランスが一番説明するのが難しいです。笑
なぜかというと、フランスの公式な教程では、ターンの構造、分割という概念をあまり持ち出さずに指導方法を展開しているからです。
それが彼らにとって当たり前の事なのでしょう。ですので、なぜかという事はハッキリと明記されていませんでしたが、これはおそらく「スキーヤーのレベルによって、ターンのどこで何をするかは全然違ったものになるはずだ」という考えから来ているのだと思われます。
ではどういう風に教程が構成されているかというと、まずはスキーをする上でキーとなる動き(角付け、荷重、回旋など)をまず本の冒頭で定義し、「このぐらいのレベルだったら、ターンのこのあたりで、こういう感じで操作・運動をしましょう」というのを、スキーヤーのレベルごとに説明解説するスタイルがメインで構成されています。
たしかにこの考え方は真っ当で納得感があります。考えてみるとどの国でも程度の差こそはあれそのように指導を展開していますし。
ただ、それを言っちゃうと今回の話は終わってしまいますので、私としては非常に困るわけです!笑
という訳で、教程の後ろの方のページでやっと登場する図を一応引用します。
本の中にある図の説明の主旨としても、大体一通り上記の方法で指導を展開した後の人向け、競技をやる人向けとしての説明になっていましてこの図はちょっと、今回の記事の主旨からは外れてます。
フランスの公式教程『Mémento』にかろうじて載っていた「競技向け」のターンの構造図
出典:Mémento de l'enseignement du ski frqnçais p.80 / ENSA 著
芸術の国フランスというだけあって独創的な書き方というか、まぁ、ぶっちゃけ言うとなんか雑ですよね。笑
一応説明をしますと、Phase1が、「ターンをやめて始める切り換えのエリア」、Phase2が「圧力を最大に感じるエリア」(少し山回りに絡んでるのがポイントで、ここは米・独と共通です)、Phase3は、「外向傾や両足の荷重配分を調整し、雪面からの圧をコントロールするエリア」という感じで説明されています。
他には、Phase1の切り換えがS字、Phase2の弧がキツくて、Phase3の弧がユルくなっているところなどはポイントかなと思います。
フランスも、競技と基礎を同じ体系で指導しますのでそういった意味では、競技者向けのこの図から読み取れることもあるのでしょうが、弧の下が浅くなっているのは、フランスが提唱している一般的なゲレンデスキーのモデルケースとは違う滑走ラインですので、別の本から違う図を引用します。
フランスの本に載っていたターンの構造図
- PREMIERE PHASE : PREPARATION
(第一フェーズ:準備)- DEUXIÈME PHASE : DÉCLENCHEMENT
(第二フェーズ:トリガー・始動)- TROISIÈME PHASE : CONDUITE
(第三フェーズ:操作・運転)- QUATRIÈME PHASE :FIN DE VIRAGE QUI PEUT ÊTRE L'ARRÊT OU LE DÉCLENCHEMENT DU VIRAGE SUIVANT
(第四フェーズ:ターンの終わり、次のターンをトリガーすることもやめることもできる)出典:Les bases du ski alpin p.86 / Dominique Keller, Laurent Girard 著
この図はアメリカとドイツに似ていますね。
これはフランスの公式の教程ではないですが、フランスのスキー団体の中でも大手のFFS系の書籍なので、ある程度フランス国内でも一般性のある解釈だと思いますし、舵取りの長さなんかがフランスの滑りに近い感じがあります。
(先ほど紹介したフランスの公式教程『Mémento』は、FFSも含めた6団体がコラボして作っている教程です。)
では動画を見てみましょう。
フランス式のターン(ゲレンデスキー)
[youtube]
[/youtube]
正統(?)なフランスのスキーよりも、少しだけ外向が強い滑りをしますが、これは滑走者が競技経験者であるという事の影響があるかもしれません。しかし、滑走者はフランスの指導資格保持者でもあるという事で、身体の内側への運び方など運動のベースにはしっかりとフレンチスタイルの匂いを感じます。
いろんな言葉で検索をかけましたが、フランスの団体とスキーヤーはあまりYouTubeが好きじゃないのか、全然動画が見つかりませんでした…。
なので、残念ですがレーサーのフリースキーはナシです。
カナダ式
カナダは、基本的にはアメリカに非常に近い3分割構成です。
特色を言うと、カナダは「人の感覚を重視する教え方」というものを大事にしていて「理論理屈はそのためにある」というスタンスを取っており、解説の仕方が他国と違い少しユニーク、紙面のデザインもおしゃれな感じです。
(おしゃれなのは良いんですが、そのせいでちょっと見づらい時もたまにあります。笑)
カナダ式のターンの構造
TURN PHASES
Turn phases link movement patterns with specific parts of the turn, providing a template for skill assessment and development. They also help in understanding cause and effect, as problems in one part of a turn will have consequences in other parts. Although sequenced from 1 to 3 for reference, turn phases can be approached in any way that is effective for results. The ultimate goal is linked, fluid skiing.ターンフェーズ
ターンフェーズとは、ターンの中の特定の部分や動きを繋げたもので、技術の上達のため、また上達度の評価のテンプレートとして活用されます。また、ターンでは、ある動きが、別のタイミングの、違う動きに影響を与えることもあることから、フェーズで考える事はターンの原因と結果を理解するのにも役立ちます。便宜上、1、2、3という順番で書かれていますが、指導に効果的であればどのフェーズからアプローチしても構いません。ともかく目指すべき究極的なゴールは、繋がりと流れのあるスキーを実現する事です。出典:CANADIAN SKI TEACHING p.4.18 / CSIA 著
言われてみれば当たり前の事が書いてありますが、なぜターンを区間で分けるのかをきちんと説明して、どのような意図で掲載しているのかをキッチリ書くのは、指導者側としては非常に分かりやすく明快で、良い取り組みだと思います。
それぞれのフェーズがどのような役割かというと、やはりこれも米独とほとんど同じで、Phase1が「仕上げ・準備」、Phase2が「始動」、Phase3が「舵取り」となっています。
英語で書かれているので、独仏語に比べると圧倒的に読みやすく、また、上で引用した様に「なぜそう考えるのか、どの様にその知識を使ってほしいのか」が色々な事柄に対して丁寧に書かれているので、カナダの教程は好きです。
動画で滑りを見てみましょう。CSIAの公式動画です。
カナダのターン(ゲレンデスキー)
[youtube]
[/youtube]
教程もそうですし、インタースキーの解説動画を見ていても、ターン後半にいかに踏みすぎずにエッジを外していくかを重視しているようですが、状況に応じて、スピードコントロールが必要な時にはしっかりと山回りでも力強いエッジングをしている所なんかは、非常に素晴らしいと思います。
次は、他の国も混ざっていて、かつ少し動画も古いですが、世界のトップ選手のフリースキーがたくさん見られて嬉しいこの動画を貼ります。
カナダのターン(レーサーのフリースキー)
[youtube]
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あまり減速要素を感じないターンの構成で、舵取りを非常に短くして滑っています。
オーストリア式
オーストリア式は3分割ですが、一番日本のスキーに近い分け方をしています。
日本のスキーが「谷回り、山回り」という説明を好んで使っているのも、もしかするとオーストリアスキーの影響が強いのかもしれません。
下の図は、SIAが監修し日本語翻訳されたオーストリアスキー教程からの引用です。こういう活動については本当にSIAは素晴らしいと思います。
(せっかくこういう活動をしてるのだから、SIAの教程の内容も、もっとオーストリアの教程をパクッt…ゲフ、ゲフフン!参考にして書けばいいのになぁ、と思いますけど)
ただ、「最新」と書かれてはいますが、出版は2007年となっていて10年以上前の本で、これはもうすでに旧版となってしまっています。最新版のオーストリア教程は2015年版のはずで、海外から買う方法を探しているのですが、残念ながら入手方法がまだ見つかりません。
(この本以降、オーストリア教程は日本語化されていません。)
ちょっと脱線しました。それでは見てみましょう。
オーストリア式のターンの構造
出典:最新オーストリアスキー教程日本語版 P.94/ SNOWSPORT AUSTRIA 著 (日本職業スキー教師協会 監修)
上下2分割+準備で3分割、ターン弧をキッチリ上下に2つに分けるあたり、日本と似ていますね。
3つの要素が出てきていますが、本の中では大体こんな感じで解説されています。
準備局面:立ち上がりによってスキーを次のターンへ方向付ける。準備局面の最後には短い抜重が表れる。
主要局面:ターンの始動、スキーの角付・荷重・回旋を行い、舵取りを開始する。
終末局面:しっかりとした外向傾(アルペン滑降姿勢)を取り、受ける圧力と方向と調整する。
私は、冒頭で言った通り米独型の3分割方式が一番ターンの成り立ちを理解しやすいと思うので、この分割方式に合理性が無いとは思っていませんが、あまり好きではありません。
ただ、日本でよく言われるような「山回りでのエッジングは無駄だからなるべく踏まないように」という記載はなく、しっかり行きたい方向へコントロールする。力が強くかかる場所なので意図したラインから斜面の下側に外れないように注意し、しっかりとした舵取りをもって、終末局面に対処するように記載されており、そういう所は、流石ちゃんとしてるなぁと思います。
動画を見てみましょう。
オーストリアのターン(ゲレンデスキー)
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基礎段階では、準備・主要・終末というのが分かる気がしますが、あまり実戦的なターンではそれが見えない気がします…。
どうなんでしょうね?
別の記事で紹介した、インタースキーの動画では、オーストリアの伝統である外向傾姿勢を強調した滑りをデモンストレーションしていましたが、オーストリアの教程では、スピードが上がるにつれて、外向傾を少なくしていく傾向があります。
大回りで見せているこの姿勢は、レースカービングと呼ばれるタイプの滑り方です。
レースカービングが出てしまっているので若干被りますが、本物のレーサーに登場してもらいましょう!
オーストリアの元世界選手、ギュンターマーダーの滑りです。
(黒いウエアの人です。)
オーストリアのターン(レーサーのフリースキー)
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ていうか、フランスの人も映ってますね。笑
まあいっか、フランスの所に載せるとオーストリアの滑りがネタバレになっちゃうし。
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さて!これで、私が本などを持っている範囲ではありますが、すべての国々のターンの構造を紹介し終えました!!
まとめに入りましょう。
まとめ
今回の記事は、今まで書いてきた中で一番かつ圧倒的に文字数の多い記事となりました。
(書く前は、もっとチョロいと思っていて、息抜きのつもりでサラッと書くはずだったんですが、なぜかこうなってしまいました…。笑)
ここまで読んでくださったあなた!凄いです!本当にスキーがお好きなんですね!!
心からお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
私の拙い記事で、スキーが大好きなあなたのスキーライフが少しでも良いものに出来たのなら、そんなに光栄なことはありません。
この記事がそういう存在になれた事を願うばかりです。
まとめ
さて、まとめです。
いや~、同じ道具で滑っていても、世界には本当に色々な考え方があるものですね!
我が国の考えも含めて、各国のスキーについて色々と言いたい放題言ってきた今回の記事でしたが、みなさんに一番お伝えしたかった事は、色々な考えに触れて、自分に合った方法でスキーライフ(楽しく滑るから、練習・上達する楽しみまで)を丸ごと楽しんでほしいという事です。
日本の大会や検定では、当然日本の基準や価値観に従って採点が行われますので、そのなかで成果を出すためには、その考えに基づいた動作運動を習得し表現する必要がありますが、上達するキッカケ、コツをつかむ方法なんてのは、別になんでもいいと思うのです。
なりたい自分、できない自分を冷静に見つめて、今、自分に必要な事を、自分が納得できる方法で練習する。
これが一番楽しい練習への取り組み方だと、私は個人的に思っています。
私は、その選択肢の一つとして、世界の技術や理論を紹介しているにすぎません。
みなさんが普段滑っている時、自分の望むように自由に雪面にシュプールを描く様に、上達の過程も方法も考え方も自分で選んでいいんです。
それを忘れないでほしいなと思います。あんまり一つの考えにとらわれて、黙々と練習をするのは楽しくないと思うので!
ただ、「いろいろありすぎて良く分からない!」という人には、やっぱり冒頭で説明した3分割方式を個人的にはおススメします。
これ、すごく納得感があって良いと思うんですよね~。
それに、今後も、雪の軌跡ではこの分割方式をベースにして記事を書いていくことになりますし。笑
まとめの最後に(メッセージ)
毎度毎度のお願いですが、この記事が「為になった」とか「良かった」と思っていただけたら、是非お好きなSNSでのシェアをして頂けたらなと思っております。
雪の軌跡の目的は、世界の優れたスキー理論・技術を紹介し、スキーが好きなみなさんの上達や、より良いスキーライフを過ごす事のお手伝いをする事ですが、最終的に目指している夢は、我が国のスキーが、今よりもっともっと発展して、スキー界のリーダーとして世界中の誰もが羨み憧れるような、そんな日本にしていきたい!と言うものです。
そのためには、我々の先を走っている欧米諸国の背中にいち早く追いつく必要があります。
日本のスキー界は、もちろん我々インストラクターも頑張っていますが、スキーヤー同士が一緒に滑って、練習をして、教え合いアドバイスし合う事によって、その土台が成り立っていると思っています。
これは、我が国が誇れる素晴らしいスキーの文化です。
私にとっても、一番最初の先生はお父さんでした。
だから、欧米のスキー始動についての優れている部分を、もっとたくさんの人に伝えられたら、この国のスキーはもっと強く、もっと美しく、そして、もっとたくさんの人に夢と勇気を与えられるものになると私は確信しています。
是非、一緒に日本のスキーをより良くしていきましょう!