シュテムターンは必要か?の記事その2です。

今回の記事では、日本と海外のシュテムターンの違い、その目的や狙いについて具体的に説明していきます。

1つ目の記事は、こちらから読めます。

シュテムターンは必要か?

シュテムターン不要論はご存じでしょうか。 スキーの上達(特にプルークからパラレルターンにレベルアップにする段階)においては、シュテムターンはデメリットが大きいの…

日本と海外の違い

日本と海外の基礎シュテムターンの操作・動作の違いはこのような感じです。
(話をシンプルにするために、海外の例として引き続きオーストリアの滑りを使って解説していきます。)

日本海外
操作開き出し捻り
スタンス広め狭め
ブレーキ要素強い弱い

日本ではシュテムターンを

・テールの開き出し操作でハの字を作り

・スタンスは広めに維持し

・ブレーキをしっかりかけながら

おこないます。

日本の基礎シュテムターン(連続写真)

引用・出典:資格検定受検者のために2022(SAJ/山と渓谷社 2021年)

日本の基礎シュテムターン(動画)

引用・出典:資格検定受検者のために2022(SAJ/山と渓谷社 2021年 DVDより抜粋)
※本動画は、上記著作物の抜粋情報を引用の公正な慣行に基づいて批評・研究の用途で利用するものであり、本アップロードには、いかなる団体や企業の著作権についても侵害する意図は一切ありません。

一方、海外のシュテムターンは

・脚のひねり(ピボット)操作でハの字を作り

・スタンスは狭めに維持し

・なるべくブレーキの姿勢を作らない状態で

行います。

海外の基礎シュテムターン(連続写真)

引用・出典:VOM EINSTIEG ZUR PERFEKTION(SNOW SPORT AUSTRIA 2018)

海外の基礎シュテムターン(動画)

この違いは何を狙っての物でしょう?

基本的な狙い・目的は、パラレルターンによりスムーズに簡単に導くため(上達してもらうため)なのですが、今回はさらに詳しく内容を見ていきましょう。

詳しく見ていくために、一旦、また経緯から振り返ります。

なぜシュテムが不要と言われるのか、どのような部分が問題視されたのか?です。

シュテムターンの問題点

前回説明した通り、シュテムターン不要論が生まれた一番のきっかけは、1930年代後半にフランス人のエミール・アレがスキーの世界大会(レース)で優勝したことが始まりです。

彼のスキースタイルは内向内傾、当時の外向外傾を主とする常識からは、かなりかけ離れたものでした。

また、彼の指導理論は”シュテムターンをパラレルターンの習得過程から極力排除する”という、これまた従来の基本とはまるで違ったアイデアを持っており、自身の著書、スキーフランセの中でも、シュテムターンを活用した初心者指導の欠点について、いくつかの指摘をしています。

エミールアレの主張を分かりやすく整理しますと以下のようになります。

  • シュテムとパラレルは切り換えの操作が違う、シュテム操作は後々使わなくなる操作である
  • 後から使わなくなる操作・技術にたくさんの時間を費やすのは効率が悪い
  • シュテムの本質は制動(ブレーキ)である初心者に過度に制動を教えることは、かえって上達を妨げる

なぜシュテムターンが変化したのかを理解するために、次からは、これらについてさらに深堀りして見ていきましょう。

さらに詳しく

ここから、シュテムターンの問題点をより具体的に説明していきます。

  • シュテムとパラレルは切り換えの操作が違う、シュテム操作は後々使わなくなる、とはどういうことか?
  1. シュテムターンはターンの切り換え(ターンの始動)で、必ずハの字形にスキーを開き出す動作・姿勢を経由します。パラレルターンはターンの切り換え(ターンの始動)でも常に足元のスキーは基本的にはパラレルの状態で滑ります。
  2. 実戦のスキーの切り換えでは、シュテムでもパラレルでもどちらを使っても実際には別に問題はありません。ですが一方で、効率の良さやハイスピードへの対応力、という意味ではパラレルターンに分があります。学習者がこれからどのくらいスキーに夢中になるか分からない状況であれば、インストラクターの教え方の都合で相手の可能性を狭めてしまう事はなるべく避けた方が良いだろう、という考えです。
  • 後から使わなくなる操作・技術に時間を費やすのは効率が悪いのではないか
  1. 既に上で述べたことと同じになりますが、より疲れずに・長い距離を・速いスピードで滑りたい!という人にとっては、パラレルターンの方が運動の効率が良いので都合がよく、シュテム操作は後々使わなくなってくる操作です。
  2. そのような意味で、シュテム操作がその人にとって当たり前になりすぎると、使う必要が無くなってからもそれを忘れるまでに時間がかかる・上達の足かせとなる恐れがある、という事です。

  • シュテムの本質は制動(ブレーキ)であり、初心者に過度に制動を教えることは、かえって上達を妨げる、とはどういうことか?
  1. もともとシュテムという言葉には、突っぱねる、抵抗するというような意味があり、言葉自体にブレーキをかけるというニュアンスがあります。
  2. 足をたくさん開いて制動すれば確かにスピードは収まりますが、逆に軽快な動きはしづらくなります。また開きすぎた脚では、左右の脚に体重を乗せ換えるのが難しくなるので、スキーを揃える感覚が覚えづらくなります。
  3. スキーでブレーキをかけるという事は、雪を削って抵抗をたくさん受け止める事です。抵抗を受け止め続けるのは、ただでさえスキーに慣れていない初心者をさらに疲れさせてしまいます(上級者であっても1日中プルークで滑ったらすごく疲れてしまいますよね。プルーク姿勢は体力の消耗が大きいのです)。
  4. パラレルでの操作を覚えづらく、疲れやすいスタンスがその人にとっての”普通な状態”つまり”一番安心できる姿勢”になってしまう事は、後々にも影響が続く大きなデメリットである、という考え方です。

海外の新しいシュテムの効果・狙い

海外の新しい基礎シュテムターンの動作、そこから生まれる効果・狙いというのは、ほとんどそのままこのエミール・アレが指摘した”旧来のシュテムターンの欠点”を打ち消すことを狙いとしています。

日本と海外のシュテム操作の違い(おさらい)

日本海外
操作開き出し捻り
スタンス広め狭め
ブレーキ要素強い弱い

  1. 足元でスキーを捻って(ピボットさせて)雪の抵抗を捉えるのは、パラレルターンでも使う共通の操作で、後々、上達してからも十分に使える技術・操作です。
  2. 狭いスタンスは、パラレルターンに近い感覚での雪や板との力のやり取り、左右のスキーへの体重の載せ替え感覚を養う事を助けます。
  3. 弱いブレーキ要素は、体力の消耗を抑える効果とパラレルターンでも使う様な、スキーで雪を削りながら力を受け止め且つ受け流しながらコントロールする感覚を養うことができます。

つまり、海外のシュテムターンは旧来のシュテムターンで問題になっていた、

  • 切り換え操作の違い
  • 後から使わなくなる操作に時間を割く無駄
  • ブレーキを覚えこませる事の弊害

をすべて解消し、よりパラレルターンを習得しやすくなることを狙った、改良版のターンという事です。

とここまで説明してきた所で、例がオーストリアだけだと違いが分かりづらい気がしましたので、いったん別の国であるアメリカの例を紹介したいと思います。
アメリカの基礎シュテムターンは、ウェッジクリスティという名前で呼ばれています。

アメリカの基礎シュテムターン(ちょっと古いVer.)

いかがでしょう、

  • ひねり操作でプルークを作る
  • 狭めのスタンスを維持
  • ブレーキをかけすぎない

が滑りの中から非常に明確に見えてきますよね。

アメリカでは、教程の改訂につれて、これらをどんどんと可能な限り極小化していく傾向がみられ、最新の滑りではほとんどシュテムとは呼べない(もともと私が勝手にシュテムと呼んでるだけで、本人達もこれをシュテムとは思っていないわけですが…。)ものになってきています。

ということで、一番新しいアメリカの教程の動画をご紹介しましょう。

アメリカの基礎シュテムターン(最新Ver.)

かなり動きが極小化してきているのが分かりますよね。

極小化しすぎて、インストラクターのお手本として成立しているのかどうか怪しいレベル(学習者が見て、インストラクターがどういう動きをして欲しいと伝えているのか、読み取りづらい滑り)になっている気もしますが、初級者に習得してほしい技術を再現する、という意味では完璧なターンとも言えます。

これはシュテムというよりもむしろ、分類的にはプルークターンに近い滑りになってきていますね。

実はこの、”プルークターン”に近づいている”シュテムターン”というのがとても大きなキーになっていて、次回の記事のテーマ、我々のシュテムターンはどうあるべきか?スキー技術はどこに向かうべきか?についての重要なヒントになってきます。

と、次回の記事のさわりにも触れられ、話のキリも良くなりましたので、今回の記事はここまでにします。

次回は、いよいよ最終回、”日本のシュテムターンはどうあるべきか?”というテーマについて話していきたいと思います。

ご期待ください。

(あと、完全に頭から抜けていたのですが、SIAの事を無視して、今まで日本=SAJとしてずっと解説してきてしまいました。最近改訂されたSIAの教程のシュテムターンの解説は非常に興味深いので、次回はそれについても触れていきたいと思います。)